富士ソフト株式会社
従業員の "情報過疎" と会議設定の手間を解消。
コミュニケーションを密にし、社内の一体感の高まりを期す。
ソリューションの "ショウルーム" づくり
携帯電話、電子決済から交通・航空管制まで、時代の最先端分野に IT ソリューションを提供している富士ソフト。独立系という立場を生かし、顧客に対してあらゆるベンダーの製品 / サービスの中からベストなものを選択・提供できる強みを持つ。したがって、常に最新の製品 / サービスにはいちはやく注目し、研究してきた。そして、このほど日本企業で初めて 1 万ライセンスという大量の Google Apps を全社導入した。
「『クラウド コンピューティング』という概念については、それが盛んに言われ始めた 2006 年の頃から着目し、Google Apps は当社の『クラウド コンピューティングにおけるサービスの主軸に置きたい製品』と考えてきました」と同社技術本部の田中尚本部長は言う。
一方、それまでの同社のメールやカレンダーのシステムは大きな課題を抱えており、まさに Google Apps の導入で解決できる見通しも立ったのである。
「Google Apps のような全く新しい概念のサービスを顧客に受け入れてもらうには、説得力のある『導入実績』が必要です。そして当社自身の問題もあったので、まずは当社に導入して課題解決し、Google Apps によるソリューションの "ショウルーム" をつくろうということになりました」と同社技術本部経営システムセンターの山本淳センター長は説明する。
オフィスごとにバラバラのシステムを使う状態
では、それまでの同社のメールやカレンダーのシステムにはどんな問題があったのか。まず、メールシステムは 3 ~ 5 年おきに部門ごとに新しいものにリプレイスしてきた。
「当社では、基幹系のシステムは全社統一のもので運用していますが、情報系は業務の一環として、それぞれの部署が手掛けているシステムの構築や運用のノウハウを磨くために部署ごとに自由に導入してよいという方針を取っていました。したがって、当社には 30 の拠点がありますが、オフィスごとにバラバラのシステムを使うという状態が続いたのです。しかし、それでは一定のセキュリティが確保できない懸念が生じ、2005 年に全社統一のメールシステムを導入しました」(田中氏)。
ところが、そのシステムも 3 年半経つと問題点が浮上してきた。同社の約 10,000 人弱の従業員(提携企業のスタッフを含む)のうち、半数以上は客先など社外に勤務している。社外から自社のメールシステムにアクセスするには、セキュリティのために VPN(Virtual Private Network: 仮想専用線網)を通らなければならない。
「VPN はいわば "裏口"。その "鍵" となる ID、パスワードは申請ベースで発行していましたが、上司が認めないケースが多く、社外勤務者の内発行されたのは、約 4 割に留まりました」と山本氏。
一体感が損なわれていることが退職理由に
その理由は、VPN を通すには客先のネットワークの一部を変えなければならない場合もあり、短期の滞在では顧客への要請がためらわれたことと、ID・パスワード管理などの正しい運用は難しいからだ。
「トップのメッセージなど重要な情報はイントラネットで公開されていましたので、社員の半数以上は社内で "情報過疎" と呼ばれる状態に置かれていたのです。勤務先が自社ではない上、情報も届かないのでは一体感が損なわれるのも無理はありません。そのことが退職理由としても上がるに至り、抜本的な解決が必須となりました」と田中氏は述懐する。ちなみにその社員の半数以上は、メールチェックの必要に応じて自社オフィスに行くことを強いられていたという。
Gmail 導入前は、UNIX をベースとしたメールシステムを導入。セキュリティ管理に関しては、社員証がなければ PC にログインできない仕組みにしていること、およびメール送信時に上長に自動転送される仕組みを導入して強化している。
一方のカレンダーも同様に、オフィスごとにバラバラの状態であった。
「部門内で完結する会議の設定などは問題ないのですが、役員や部門長など幹部を集める会議を設定する時は電話やメールでスケジュールを確認・調整しなければならず、大きな手間がかかっていました」(山本氏)
ネームバリューのある Google が本気で開発
同社では、上記のようなメールおよびカレンダーの問題解決と、自社が提供する製品ラインナップ選定という観点から、Google Apps とともにほかの製品 / サービスを検討。
「いつでも、どこでも使えるWebでの提供形態では、Google Apps がベストと判断しました。絶大なネームバリューのある Google 社が本気で開発するサービスであるということは、それだけで販売代理店として売りやすくなるということと、提供される容量が 1 人 25 GB という大きさ、そして導入費用の圧倒的な安さがその決め手となりました」(田中氏)
そのコストメリットは、「1 万ライセンス分のシステムを自前で構築すると、Google Apps の数倍かかる」(山本氏)ことが判明。さらに、サーバーのメンテナンスから開放されることも大きなメリットであるという。
以上の点で Google Apps の導入は決めたものの、不安の声もあったことも事実である。その懸念は、「自社の情報を Google は本当に見ないのか」ということと、「どこでも見られるということに対するセキュリティは担保できるのか」という 2 点に集約された。1 つ目は、Google 社内でも特定の情報がデータセンターのどこにあるかがわかる状態となっておらず、またそうした行為は決して発生しない(ありえない)という契約になっていることが確認され、2 つ目は、補完するシステムを組み合わせることでクリアすることが確認された。
とはいえ、いきなり全社に 1 万ライセンス導入するのではなく、3 カ月ごとに 500 ライセンスずつ増やして検証していく方針が取られることになった。そして 2008 年の 6 月末から導入が始まり、12 月末に全社導入を正式決定、2009 年 4 月にはその運びとなる。
クラウド化のさらなる進展は間違いない
これまでに導入が済んだユーザーからは、次のような反響が届いていると田中氏は言う。
「携帯でどこにいてもメールやカレンダーを簡単に見られるのは、やはり大変便利だと。それまでは、モバイル PC に通信カードや携帯電話をセットし、VPN にアクセスして、という手間がかかっていましたから。また、カレンダーの機能で幹部会議の設定も楽になりましたし、Google トークの在席状況確認機能で人とのコミュニケーションが取りやすくなったという声も届いています。今後は、Google サイトも併用して情報共有の場を充実させることで、社外勤務の従業員にあった "情報過疎" を一掃し、コミュニケーションを密にできる期待が高まっています」
一方、テスト導入段階で、ユーザーインターフェースの柔軟性や、エンタープライズ向けの管理機能に課題も見出している。
「ユーザーとしても、販売代理店としても、これからもそういった課題解決への要望は Google 社にリクエストしていきます。クラウド化の流れは今後さらに進展するのは間違いない中で、Google Apps はどんどん磨かれ、より安全・安心でき、使い勝手のよいシステムになることも間違いないでしょう」と田中氏は締め括った。
