ストロンチウム斜方ホアキン石(奴奈川石) / Strontio-orthojoaquinite

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Sr2Ba2(Na,Fe)2Ti2Si8O24(O,OH)・H2O   新潟県糸魚川市青海川 FoV=7mm 採集品
糸魚川では、苦土リーベック閃石曹長岩という特殊な岩石が稀に見つかります。その岩石には、このストロンチウム斜方ホアキン石をはじめとする、いくつかの珍しい鉱物が入っていることで知られています。
ストロンチウム斜方ホアキン石は、1974年に発表された日本の新鉱物で、糸魚川を流れる姫川の古名であり、日本神話に登場する神様である奴奈川姫(ぬなかわひめ)にちなんで、発見当時は「奴奈川石」と呼ばれていましたが、国際鉱物学連合に正式な申請の手続きをしないでいたそうです。その後1982年になって、アメリカのサンベニトから、新鉱物としてストロンチウムホアキン石とバリウム斜方ホアキン石が発表され、その論文の中で奴奈川石についても「ストロンチウム斜方ホアキン石」という名前が提案され、正式に新鉱物として承認されたという経緯のある石です。つまり日本人が発見し、アメリカ人が命名したという新鉱物なのです。
しかし長ったらしい名前ですし、今でも「奴奈川石」と呼ばれることは多いようです。

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Sr2Ba2(Na,Fe)2Ti2Si8O24(O,OH)・H2O   新潟県糸魚川市青海川 FoV=11mm 採集品
母岩に埋没していますが、特徴的な結晶の一端が見えているもの。

名前だけでなく化学式も長ったらしくて、SrとBaとNaとTiの含水珪酸塩鉱物という珍しい組成をしています。緑廉石グループの鉱物と同じようにREEの受け皿となりえる構造をしているみたいで、奴奈川石のSrのサイトにはCeなどのREEやNbが混じってくるようです。またこの産地では、斜方でない単斜晶系タイプの「ストロンチウムホアキン石」も見つかっていて、それは従来のものに比べて、REEを多く含むという研究もあるようです。

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Sr2Ba2(Na,Fe)2Ti2Si8O24(O,OH)・H2O   新潟県糸魚川市青海川 FoV=17mm 採集品
曹長石に囲まれたわずかな空隙に、四角錐の集合体が見えるもの。

青海川金山谷には、この鉱物の母岩である「苦土リーベック閃石曹長岩」のもの凄い大岩が見られる場所があります。金山谷は蛇紋岩地帯であり、ロジン岩や翡翠と同じように、この岩石も蛇紋岩に包まれて地下から運ばれてきたようです。現在、付近は保護区となり採集はできませんが昔は自由に叩けたそうで、晶洞から2㎝に及ぶ結晶が採集されたこともあるそうです。
ちなみに「苦土リーベック閃石曹長岩」は非常に硬くて、見つけたとしても割るのがとても大変です。また「奴奈川石」は「苦土リーベック閃石曹長岩」を発見することができれば、高い確率で入っていますが、ほとんどが不定形のミリサイズのもので、結晶形を示すものは大変稀です。

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