頓智ドット株式会社
1ユーザ単位でアカウント追加ができるGoogle Apps for Business は、まさに創業期にある企業向けですね。
画期的な拡張現実アプリケーションを開発

「セカイカメラ」という画期的な AR(Augmented Reality:拡張現実)アプリケーションを開発し、世界の IT シーンに衝撃を与えた頓智ドット株式会社(頓智・)。2008 年 8 月に「セカイカメラ」の産みの親である CEO の井口尊仁氏が設立し、翌 9 月、サンフランシスコで開催された世界有数のベンチャーコンテスト「TechCrunch50」でプレゼンテーションの機会が与えられ、喝采を浴びた。2009 年 9 月に「セカイカメラ」が App Store でリリースされると、4 日間で 10 万ダウンロードを記録。2010 年 3 月、「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー '09/ 第 15 回 AMD Award」で、大賞/総務大臣賞を受賞するという栄誉に浴している。
そのような日本有数の IT ベンチャーである同社は、設立直後の 2009 年 6 月に Google Apps for Business を導入した。
「私が入社した 2009 年 3 月の時点では、社員数はまだ 4 人でした。それまでは、全員が顔を合わせてのコミュニケーションが十分できるので、とりわけ内部的なコミュニケーションやコラボレーションのツールの必要性を感じてはいませんでした。しかしながら、次第に情報の在り処がカオティックになってきていたのです。『セカイカメラ』のリリースが間近になると急激にエンジニアをはじめとする社員の数が増え始めたので、そろそろきちんとしたコミュニケーションや情報共有の手段を用意し、情報の整理を始めておかなければ、ということになりました」と CTO の近藤純司氏は言う。
Gmail 利用の成功体験が導入の決め手に

CTO
近藤純司氏
同社は小規模なベンチャー企業ということもあり、設立時からサーバーなど物理的な情報インフラを所有せず、基本的にクラウドのサービスを利用して事業運営を行うという戦略を打ち出していた。したがって、オンラインストレージサービスのほか、商用ウェブサービスを利用し、そこに自社のリポジトリを構築して製品のソースコードを格納するといったことを行っていた。また、メールは個人的に Gmail などを利用するほか、 Google グループ をメーリングリスト的に活用するなどしていた。
「そうしていると、情報があちこちに分散するようになり、探しにくい状態になっていきました。そこで、一つのプラットフォームに集約すべく、 Google Apps for Business を導入することにしたのです。その時は、ほかの製品は考えませんでしたね。当社 COO の佐藤僚に、以前利用しての成功体験があったからです」
佐藤氏が頓智・に加わる以前に勤務していた会社は、オンプレミスで情報システムを運用していたが、規模の縮小で誰も管理する人がいなくなるという状態に陥り、 Google Apps for Business に移行させて事なきを得、 Gmail などの使い勝手の良さを実感したという。
「その時に実感できた、Google Apps for Business ならば当社くらいの規模なら自分たちでもすぐにコミュニケーションシステムの環境をつくることができるという要因が決め手になりましたね」
クレジットカードで直接購入、即日利用開始

情報システム
マネージャー
山崎信明氏
それだけではない。佐藤氏と以前の会社を共にしていた情報システムマネージャーの山崎信明氏は、次のように補足する。
「Google Apps for Business は、1アカウントから導入できるのが大きいですね。当社ではいつ新しく社員が入社してくるかわからないからです。『明日1人入るからよろしく』と言われて、次の日に本人に希望のメールアドレスを聞き、その直後からメールシステムが使えるようになるのは大きなメリットです。しかも、契約年度の途中の増加であっても、追加するユーザーアカウントの料金は次回の全アカウントの更新日までの月割りの差額が一括して翌年度の支払いに組み込まれます。無駄なく購入できる上に、ユーザー管理がバラバラにならずに済みます。まさに当社のようにアーリーステージにある企業向きの製品だと思いますね」
ちなみに、同社では Google Apps for Business を Google のサイトからクレジットカードで直接購入している。「以前利用した経験があるので、導入に際しては特にコンサルテーションを必要としなかったから、販売代理店を通す必要もなかった」と山崎氏は説明する。そして、Google Apps for Business 本体だけでなく、 Google Apps 向けのアプリケーションを購入できるマーケットプラットフォーム「Google Apps Marketplace」も積極的に利用し、必要なアプリケーションをスピーディーに導入している。
「Google カレンダー を日本の企業が使いやすいようにアレンジした『feedpath Gadget』を導入しました。今はガントチャートが作成できるよいツールを探しているところです。そのように、何か使えそうなものはないかとちょくちょく見に行っていますね」(山崎氏)
ネットワーク管理は 1 人の片手間で
山崎氏はまた、システム管理の面での Google Apps for Business のメリットについて次のように説明する。
「メールはもはや電話よりも重要なツールとなっています。システム管理者としては、システムダウンの心配が常につきまとうものですが、 Google Apps for Business ではその心配から解放されるのがありがたいですね」
また、オンプレミスのようにわざわざ VPN 環境を用意して社内サーバーに接続させるといった面倒なことも一切しなくて済み、セキュリティ確保に頭を悩ませる必要もないことも大きいという。
「ネットワーク管理を行うには、当社のように 50 人ぐらいの規模でフルのオンプレミスの場合、3 人の専任者が必要ですが、現在当社では私1人が片手間でやるだけで済んでいます。あるベンチャー企業の経営者が『我々はサービスを開発し提供するためにパワーを使うべきで、サーバーやセキュリティのことなどにパワーを割かれるべきではない』と言っていましたが、全くそのとおりだと思います」
ナレッジをシェアする最も効率的な方法
Google Apps for Business 導入後、同社では Gmail のほか、もっぱら Google ビデオ、 Google サイト、 Google ドキュメント を活用している。それぞれの活用法について、近藤氏は次のように言う。
「Google ビデオ は、社内やベンチャー仲間とのファイアサイドチャット的な勉強会を録画して共有するのに使っています。新人が入社した時などにこうしたナレッジをシェアする、最も効率的な方法だと思います。Google サイト は、分散する情報にアクセスしやすくするポータル的な画面をつくるのに利用しています。情報そのものは、Google ドキュメント をオンラインストレージとして活用し集約化していきたいと考えています。Google ドキュメントは、製品開発のマイルストーンをスプレッドシートにプロットして共有したり、テンプレートを使って勉強会のアンケートを取り、集計するのにも使っています」
近藤氏はさらに、Google Apps for Business 導入の基本的なメリットについて、次のように補足する。
「当社では、エンジニアのパフォーマンスを最大化させるために、勤務時間にコアタイムを設定せず柔軟にしています。したがって、いつでもどこからでもアクセスできる Google Apps for Business は便利ですね。先の震災時は交通機関が乱れたので自宅での作業を奨励しましたが、それほど問題は生じませんでした。バーチャルミーティングのツールなども使って自宅からディスカッションに参加できる環境も用意していますが、今後、Google Apps for Business でその分野の画期的なアプリケーションがリリースされることを心待ちにしています」