昨夏、絵本『ぐりとぐら』をテーマに講座をした高校で、
1月に「宮沢賢治の童話を読んで雑穀を学ぼう」というタイトルで
宮沢賢治と雑穀をテーマにおはなし&調理実習をさせていただきました。
宮沢賢治の作品を読み、雑穀を調理して、作品とお料理を味わってみようという、
もりだくさんの内容です。


雑穀たべたことありますか?
雑穀とは主に、稗(ひえ)、黍(きび)、粟(あわ)など
イネ科の小さな実をつける作物のことをいいます。
加えて、ハトムギや高黍(たかきび・もろこし)、アマランサスなどの小さな実も
おおきなくくりで「雑穀」とよばれています。

ところで、
「雑」ということばは、どちらかというと一般的にあまりいい意味で使われていません。
そして本来、米や麦とは異なる穀物の総称として使われている「雑穀」です。
けれども栄養も豊富で、実は米文化よりも以前から食されていて
現代でも栄養面やおいしさ、穀物としての利用において、
あらゆる可能性を秘めている価値あるものとして
麦や米に対する「雑」ではなくて、
むしろ
「いろいろあってバラエティ豊か」
「異なるものがたくさんあるから、力強い」というような
前向きな明るさや、多文化共生的な意味があるように思います。

宮沢賢治の作品に雑穀?
実は童話作品によく登場しているのです。

↑『雪わたり』(小林敏也・画 パロル舎)
 『狼森と笊森、盗森』(片山健・絵 ミキハウス)

『狼森と笊森、盗森』では
岩手山のふもと森のそばでくらしはじめた人間は畑で粟や稗や蕎麦を育て、
森たちの好物になるのは、その人間たちがつくる粟餅です。

『雪わたり』で四郎とかん子が歩く雪の野原は黍の畑。
二人が招待された狐の幻灯会ででてきたのは黍団子。

『鹿(しし)踊りのはじまり』で嘉十が野原でたべていたのは粟と栃の団子。
そのほかの作品にも雑穀がでてきます。探してみてくださいね。

宮沢賢治賢治のふるさと岩手県をはじめ、
東北地方では昔から厳しい自然環境があり米作りにも大変な苦労がある歴史もありますが、
雑穀が登場している賢治作品には
自然と人間の語らいからうまれる豊かさを感じさせてくれるものばかりです。
『狼森・・・』のように、「いいかあ」「いいぞお」と自然と人間が語り合える世の中を
今こそ思い出したいものです。

賢治作品のおはなしの後、午後からは生徒のみなさんと調理実習をしました。
作品をとおして紹介した稗と粟をつかってのお料理です。
みなさんとつくったのは

10種類の雑穀のはいった「雑穀ごはん」


生姜とねぎもたっぷりいれて、体の温まる「稗と大根の中華風のスープ」


粟とリンゴジュースで甘酸っぱくとろりとしている「粟とりんごのコンポート」


雑穀は宮沢賢治のふるさと岩手県花巻市でつくられているプロ農夢花巻のものを
イーハショップさんからとりよせました。


さて、試食です。
 味がうすい~ 
 ものたりない~
という声もあれば

 体によさそう 
 (雑穀って)食べず嫌いだった。おいしい
 優しい味がする
 ほっとする
などうれしいコメントもいただきました。

調理実習するときにいつも感じるのは
参加者も私も何かしら一種のたのしい高揚感に包まれることです。
お料理すること自身たのしいことですが、
みんなで一緒に何かを作り上げることって本当にたのしい!

みんなで作ってみんなで味わうからこそ生まれる「おいしい」も
食べることには欠かせないとっても大切な栄養だと思います。

これを機会に、宮沢賢治の童話を、そして雑穀をいろいろ味わってみて下さいね。

参加の皆様、協力いただいた先生方どうもありがとうございました。