アフリカで中国の影響力拡大、武器売却が急増

アフリカ大陸の54カ国のうち、7割近くが中国製の装甲車両を保有

中国は経済と安全保障に関して世界で影響力を拡大してきた

Photo: Kin Cheung/Associated Press

 【ワシントン】中国は武器売却や軍事訓練、インフラ投資を通じて、アフリカ大陸で確実に影響力を拡大している。国際軍事情報大手ジェーンズの最新の分析で分かった。

 ジェーンズのリードアナリスト、ディラン・リー・レルク氏は「このトレンドは明らかに拡大傾向にあり、中国は武器売却を駆使した外交を通じて、アフリカ諸国に対する影響力や権力を相当高めている」と話す。「これは軍事的な依存だ」

 ジェーンズの新たな分析によると、アフリカ大陸の54カ国のうち、7割近くが中国製の装甲車両を保有している。またアフリカにある軍用車両で中国からの輸入は全体の約2割を占める。ジェーンズの分析からは、過去20年に中国によるアフリカ諸国への軍装備売却が、従来アフリカ大陸の支援者であったロシアと比べて、急増していたことも浮き彫りとなった。...

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 【ワシントン】中国は武器売却や軍事訓練、インフラ投資を通じて、アフリカ大陸で確実に影響力を拡大している。国際軍事情報大手ジェーンズの最新の分析で分かった。

 ジェーンズのリードアナリスト、ディラン・リー・レルク氏は「このトレンドは明らかに拡大傾向にあり、中国は武器売却を駆使した外交を通じて、アフリカ諸国に対する影響力や権力を相当高めている」と話す。「これは軍事的な依存だ」

 ジェーンズの新たな分析によると、アフリカ大陸の54カ国のうち、7割近くが中国製の装甲車両を保有している。またアフリカにある軍用車両で中国からの輸入は全体の約2割を占める。ジェーンズの分析からは、過去20年に中国によるアフリカ諸国への軍装備売却が、従来アフリカ大陸の支援者であったロシアと比べて、急増していたことも浮き彫りとなった。

 中国からの軍装備の輸入が多い国はタンザニア、ナイジェリア、スーダン、カメルーン、ジンバブエ、ザンビア、ガボン、アルジェリア、ナミビア、ガーナ、エチオピアとなっている。

 ジェーンズによると、タンザニアでは、軍が抱える装備の約半分が中国製で、米国製は約11%を占めた。大半が時代遅れとなっている旧ソ連製は約32%だった。軍装備には装甲車や戦車、機体などが含まれる。

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 米ウェイクフォレスト大学のリナ・ベナブダラ助教(政治学)は、中国のソフトパワーによるアプローチがアフリカ諸国にとっては、米国式よりもいくつかの点において、好意的に受け止められているかもしれないと指摘する。

2019年、南アフリカ沖で行われた軍事演習のため現地に向かい歓迎される中国のフリゲート艦

Photo: Chen Cheng/Xinhua/Alamy

 中国のソフトパワーの例として、アフリカの司令官が軍事ネットワーク建設のため中国を訪問すると、ハイレベル級の交流を行うといったことが挙げられるとベナブダラ氏は話す。これが多くのアフリカ諸国で中国への友好ムードを醸成しており、中国が基地を構えるジブチなどでは、中国企業などが地元コミュニティーに加わろうとすることで、地元に恩恵をもたらすという。

 ベナブダラ氏によると、これとは対照的に、ジブチの米軍基地では地元市民は立ち入り厳禁となっている。

 バイデン政権は戦闘機や防空システム、兵力を中東から引き揚げ、アジア重視に舵(かじ)をきることで、軍事資源を中国との覇権争いに集中的に投下させようとしている。だが、政府当局者は、中国と競争するためには、アフリカを含め世界の別の地域にも軍事能力の一部を振り向ける必要があると考えている。

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 トランプ政権は、ニジェールで起きた急襲攻撃で兵士4人が死亡したことを受けて、アフリカからの米軍撤収を試みた。それ以降、米国防総省はアフリカの長期的な政策についてなお固めきれずにいる。

 中国が中央アフリカの小国、赤道ギニアに大西洋で初となる軍事基地の建設を目指していることが判明すると、米情報当局者の間では警戒感が高まった。2月には、米高官が赤道ギニアを訪れ、中国の基地建設を拒否するよう説得に走っている。

 アフリカの東海岸については、米国はジブチの中国基地に危機感を抱いている。中国の基地は、米国が機密にかかわるようなドローン(小型無人機)作戦などを実施する米海軍基地キャンプ・レモニエに近い。米国防当局者はこれまで、中国の工作員が現地で米軍のパイロットにレーザーを照射したとして批判している。