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徹底的に冷蔵庫の基本を見直し、省エネ性を追求した三菱電機の新型冷蔵庫

大容量やすぐれた冷凍・冷蔵技術も魅力ですが、24時間365日、休むことなく稼動させる冷蔵庫は何と言っても省エネであってほしい。そんな基本性能のブラッシュアップに注力した三菱電機「置けるスマート大容量」シリーズの新モデルが誕生しました。断熱材や冷却ユニットなどを改良することで、517Lの「MR-WX52C」は501L以上クラスにおいて省エネNo.1を達成(250kWh/年)。このMR-WX52Cを例に、発表会で紹介された三菱電機の新型冷蔵庫の省エネ性能の秘密をお伝えします。

「置けるスマート大容量」の新モデルには庫内容量700〜470Lが用意された「WXシリーズ」5機種(MR-WX70C/MR-WX60C/MR-WX52C/MR-WX47C/MR-WX47LC)、庫内容量600L・517Lの「JXシリーズ」2機種(MR-JX60C/MR-JX52C)、庫内容量455Lの「Bシリーズ」1機種(MR-B46C)がラインアップ。WXシリーズは2017年8月30日発売予定で、JXシリーズとBシリーズは2017年9月15日発売予定です

真空断熱材の改良で省エネ性能アップ!

冷蔵庫は外部からの熱の侵入を防ぐために、外壁の内側を真空断熱材で覆っています。この真空断熱材の性能は年々向上しており、そのおかげで薄くても高い省エネ性能を発揮。断熱材が薄くなるほど、容量増に還元できるため、“外観サイズはそのままで庫内容量アップ”を実現してきました。三菱電機の冷蔵庫は真空断熱材とウレタンで断熱していますが、2012年にウレタンを薄くした新構造「SMART CUBE(スマートキューブ)」を開発。SMART CUBE の採用により、“スリムで大容量”は劇的に進み、2015年に発売された「MR-WX48Z」(475L)を例にすると、その9年前に発売された「MR-G40J」(401L)と比べ、設置スペースの幅を小さくしながら容量は74Lも増量させることに成功しました。

同等の断熱性能を有しながら、SMART CUBEは従来の断熱材よりも厚みが約16mmも薄くなりました

同等の断熱性能を有しながら、SMART CUBEは従来の断熱材よりも厚みが約16mmも薄くなりました

このように薄型化された断熱構造「SMART CUBE」が、新モデルではさらに進化。真空断熱材に入っているガラスの繊維の細さを最適化することで、断熱性能を高めました。と言われても、具体的な仕組みがわかりませんよね。もう少し、詳しく解説しましょう。

冷蔵庫などに使われる真空断熱材は、芯材となるガラス繊維(グラスウール)などをラミネートフィルムで覆い、その内部を真空にすることで作られていますが、芯材となるガラス繊維は内部で繊維同士が接触することで、少量ではあるものの熱を通してしまいます。そこで三菱電機では、このガラス繊維自体の構造と細さを見直し、ガラス繊維と真空との絶妙なバランスを導き出すことで、従来以上の断熱性能の向上を実現しました。この高性能真空断熱材は、今回発表されたすべてのモデルに搭載されます。

ガラス繊維を細くして接触面を従来よりも増やすことで、抵抗が増し、熱が伝わりにくくなりました

ガラス繊維を細くして接触面を従来よりも増やすことで、抵抗が増し、熱が伝わりにくくなりました

ガラス繊維の細さを最適化した高性能真空断熱材と従来の真空断熱材の性能を比較してみました。真空断熱材の片側を熱し、その反対側が40℃になる時間を計測した結果、高性能真空断熱材のほうが1時間以上遅く到達。熱が伝わりにくいことが実証されました

冷却ユニットの高効率化で省エネ性能アップ!

高効率冷却ユニットの説明をする前に、冷蔵庫が冷える仕組みを知っておきましょう。冷蔵庫の冷却システムはエアコンとほぼ同じで、圧縮機(コンプレッサー)で冷媒を圧縮して高温高圧し、液化させ、その液化した冷媒が冷却器で減圧されて気化する際に周囲の熱を奪います。冷却器で冷やされた冷気をファンで庫内に送風することで、冷蔵庫全体が冷やされるというわけです。

液体は気化する際に周囲の熱を奪う性質があり、これを「気化熱」といいます。一般的な家庭用の冷蔵庫では、この気化熱を利用した冷却方法を採用しています

新モデルでは、冷却器に工夫を凝らすことで冷却能力を向上しました。

冷却器の中央部分に縦に並んでいるフィンが冷やされ、そこをファンで送風された空気が通ることで冷気となり、庫内が冷たくなるのです

上の写真でもわかりますが、冷却器の脇にフィンはありません。これは構造上、仕方ないことなのだそうですが、結果として、フィンのない部分を通過する風は十分に冷やされないまま冷蔵庫内に戻されていました。そのロスを改善すべく、冷気をフィンのある中央部に集められるように冷却器の両サイドに「エアガイド」を搭載。空気の流れをさえぎる板のようなものを取り付けるだけというシンプルな改良ですが、下の動画のように「エアガイド」を装着したことで中央部の通風量が大幅に増しました。この高効率冷却ユニットも、今回発表されたすべてのモデルに搭載されます。

冷却器の左右にエアガイドを搭載

冷却器の左右にエアガイドを搭載

圧力差を維持することで省エネ性能アップ!

上記で冷蔵庫が冷える仕組みを解説しましたが、冷媒が液化している部分は高温高圧、気化している部分は低温低圧になっています。しかし、庫内が十分に冷やされるとサーモスタットにより圧縮機が停止。それにより冷媒が高圧から低圧に流れ込み、圧力差がなくなることで冷却器の温度が上昇するという現象が起こります。その状態から再び圧力機が稼動する時に、大きな負荷がかかり電力ロスが発生。そこで、新モデルでは圧力機停止中に高温圧力と低温圧力の間に設けた制御弁を閉めることで、圧力差を維持し、冷却機の温度上昇を抑制する方法を採用しました。圧力差を保った状態から再運転できることにより、少ない電力での再冷却も実現しており、省エネにもつながっています。


さらに、庫内温度の目標温度と実際の温度の差を検知し、風量調節をきめ細やかに制御する方式を冷蔵室、製氷室、瞬冷凍室、野菜室に採用。この温度制御と制御弁を用いた仕組みで、ムダな冷やし過ぎを抑え、省エネ性を改善しました。なお、この制御システムが搭載されているのはMR-WX52CとMR-WX60Cのみ。

野菜室に新提案! 清潔を維持しやすいトレイを採用

三菱電機の「置けるスマート大容量」には3色のLEDを照射することで、日光の1日のサイクルを作り出し、光合成の活性化を栄養素生成を促進する野菜室「朝どれ野菜室」が2016年モデルより搭載されています。野菜を入れておくだけで、ビタミンCの量が初期値より約18%アップしたり、糖量が約9%アップするなど、まさに“野菜が育つ”野菜室。保存性能は文句なしでしたが、野菜を入れておくと土汚れや野菜クズなどで室内が汚れてしまい、その清掃が意外と大変でした。容量が増えている分、野菜室自体も大きく、野菜室を取り外して洗うにはシンクでは対応できず、お風呂場で洗っているという人もいるほど。そこで、新モデルでは野菜室の下に抗菌作用のある「ハイブリッドナノコーティング」を施したクリーントレイを配置。トレイを外して洗うだけで、キレイがキープできます。

<関連記事>朝どれ野菜室の効果が知りたい方はこちらをチェック!

野菜室の下にある薄い紫色のトレイが、クリーントレイです

ハイブリッドナノコーティングは静電気も抑制するため、野菜クズなどが付きにくくなっています

野菜室に調味料を入れる方も安心なように、油を含んだ汚れも付着しにくくなっています

野菜室に調味料を入れる方も安心なように、油を含んだ汚れも付着しにくくなっています

汚れた野菜室をふきんで拭くだけでは、汚れはなかなか落ちません。下手をすると雑菌が増殖することもあります。野菜を取り出すという手間はありますが、トレイ全体が洗えるのは魅力

中村真由美(編集部)
Writer / Editor
中村真由美(編集部)
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。気づけば15年以上、生活家電の情報を追い、さまざまな製品に触れています。
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