プーチン氏が36年まで続投も ロシア下院、大統領任期「リセット」の改憲案を承認
ロシア連邦議会下院は10日、大統領任期の制限撤廃を盛り込んだ改憲案を承認した。これにより、現在4期目で2024年に任期満了を迎えるウラジーミル・プーチン大統領(67)が、再出馬できる見通しになった。
改憲と同時に大統領経験者の任期をリセットするこの案では、プーチン氏が改めて立候補できるようになる。
しかし、プーチン大統領は議会で、大統領任期の制限を撤廃するかどうかは、まずは憲法裁判所が判断する必要があると述べた。
憲法裁判所が合憲と判断すれば、プーチン氏は最大2期12年、つまり2036年まで留任する可能性がある。
ソ連国家保安委員会(KGB)元職員のプーチン氏は、2000年に大統領に就任して以降、権力を握り続けている。
現行憲法では、大統領任期は連続2期までと定められている。
プーチン氏を強力に支持する世界初の女性宇宙飛行士ワレンチナ・テレシコワ議員が、改正案を提出した。ロシア連邦議会は、プーチン氏を支持する議員が大多数を占めている。
4月22日には、改憲の是非を問う「国民投票」が実施される予定。この改憲は、大統領の地位と議会との権力バランスを著しく変える可能性がある。
「任期をリセット」
プーチン大統領によると、任期を「ゼロに戻す」改正案は、現職の大統領を含む、あらゆる人に対する制限を撤廃し、将来の開かれた自由選挙への参加を認める」というもの。
来月の国民投票が支持し、「憲法裁判所が違憲ではないと判断すれば」、改憲案は実施されるとプーチン氏はテレビ中継された議会演説で述べた。
また、議会選挙の早期実施は不要だとして、別の議員による提案を退けた。
議会の権限強化も
プーチン氏は今年1月、現在大統領に与えられている首相や閣僚の任命権を、議会に移譲するなどを盛り込んだ憲法改正を、唐突に提案。激しい議論を引き起こした。
プーチン氏は10日の議会演説で、「強力な大統領の地位は必要不可欠」だとした一方で、議会は「より幅広い権力を持つべき」だと付け加えた。
こうした変更は、「我々の主権や伝統」、そしてデジタル技術や新型コロナウイルスなどの新たな課題を含む、抜本的変化の真っ只中にある世界での「我々の価値を強化するために」必要なことだと述べた。
プーチン氏は、長期的に見れば、ロシアには「権力者を定期的に変えられるという保証が必要」だと述べた。また、「選挙は開かれた、競争力のあるものでなくてはならない」と強調した。
さらに、一部の西側諸国ではここ数年間、政権の樹立がうまくいっていないと述べ、西側式の議会制度は導入しない考えを示した。
陰の実力者
BBCのサラ・レインスフォード・モスクワ特派員は、この改憲案は、プーチン氏の将来を確実なものにするための手続きのようだと指摘する。
プーチン氏は2000年から2008年まで大統領を務めた後、2008年から2012年までの間は首相を務めた。プーチン氏は首相だったにも関わらず、陰の実力者だと目されていた。
権力の座に残るためのこうした工作について、当時は大々的な抗議行動が各地で起きた。その反プーチン派の人たちは今では、プーチン氏が80歳代まで実験を握り続けるかもしれない事態を前にしていると、レインスフォード記者は指摘する。