野球

巨人Vに水差すドーピング騒動 ドーム社提供サプリから微量の禁止物質検出、球界以外にも波及

 5年ぶりVに水を差す不祥事だ。巨人は25日、禁止物質を含むサプリメントを複数の選手が摂取していたと発表した。

 オフィシャルサプライヤー契約を結ぶ株式会社ドームがこの日、球団に報告。提供するサプリメントのうち1製品から、世界反ドーピング機関(WADA)指定の禁止物質3種類が微量ながら検出されたという。

 これを受けて球団が聞き取り調査をした結果、問題のサプリメントが発売された6月以降、複数の選手が摂取した記憶があると回答。NPB(日本野球機構)に報告するとともに、球団でも独自に専門機関に依頼して検査を進める方針だ。

 NPBは、巨人以外の球団にもドーム社と個人契約を結んでいる選手がいるため、12球団と情報を共有し注意喚起した。

 今季はオリックスのメネセス、広島のバティスタがドーピング違反で出場停止処分を受けたが、現時点でその他に陽性反応は出ていない。

 ドーム社は「大変ご迷惑とご心配をおかけしていることを深くお詫び申し上げます。今回の混入事故の原因を徹底的に追求し、再発防止に努めさせていただきます」としている。

 「現時点の推定混入量は、製品分析上の検出限界100ナノグラム以下、または検出限界程度とみられ、極めて微量で、ドーピング検査で陽性反応が出る可能性は極めて低いと考えている」と説明。1ナノグラムは10億分の1グラムである。それでも、球団を信用して公式サプリメントを取った選手たちが、覇権奪回を果たした奮闘につまらないケチをつけられる事態は罪作りだ。

 禁止物質成分が検出されたのは、6月に発売された同社ブランドDNSのサプリメント製品「アイアンSP(アイアンスーパープレミアム)」。

 同社によると、反ドーピングの国際認証を得るために「アイアンSP」の分析を英国の機関に依頼したところ、筋肉増強作用のある物質が3種類見つかった。本来は製品に含まれない物質で、製造を委託している工場が以前につくっていた製品の成分が混入した可能性があるという。既に2000個が市場に流通しており、同社が回収を進めているが、ドーピング検査を受ける可能性があるアスリートには、今後の摂取を控えるように呼びかけている。

 同社の安田秀一社長(50)は、かつて法大アメフト部で主将を務め、大手商社を経て1996年に設立。テーピングの輸入販売から事業を拡大し、アンダーアーマーの販売、サプリメント販売、トレーニング施設事業などを行っている。2016年に法大アメフト部監督、17年から18年までは総監督を務めた。ドーム社と巨人のユニホームの5年契約は今季限り。今後の契約にも影響を及ぼすだろうか。

 また、同社は巨人以外にも多数のチームと契約している。サッカーJ2大宮、バスケットボール男子日本代表、卓球Tリーグなど計18団体。個人契約選手も野球、サッカー、陸上など39人に上り、巨人では阿部慎之助、岡本和真、吉川尚輝、女子ゴルフの畑岡奈紗などがいる。さらに法大、慶大、東大、立大や高校の運動部も多数サポートしている。

 DNSブランドではサプリメント以外にもプロテイン、エナジーゼリー、原監督の直筆ラベル「和と動」がプリントされたエナジードリンク(500ミリリットル、200円)を発売している。

 安田社長は学生スポーツの産業化と環境整備にも深く関わっているだけに、早急な原因究明と説明を求められる。

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