図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るステントデリバリーシステムを示す。このステントデリバリーシステム10は、図1に示されるように、管状に形成された内側チューブ体(内管)12と、該内側チューブ体12の外周側に設けられる外側チューブ体(外管)14と、前記内側チューブ体12と外側チューブ体14との間に収納された拡張可能なステント16と、前記外側チューブ体14を前記内側チューブ体12に対して移動させるための操作部18とを含む。
なお、図1において、内側チューブ体12及び外側チューブ体14の左側を「基端(後端)」側(矢印A方向)、前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14の右側を「先端」側(矢印B方向)と呼び、他の各図についても同様とする。
内側チューブ体12は、図1~図4に示されるように、ガイドワイヤ20(図2参照)を挿通するためのガイドワイヤルーメン22が形成された第1先端チューブ24と、前記第1先端チューブ24の基端側(矢印A方向)に連結部材26を介して連結された第1基端チューブ28と、前記第1基端チューブ28の基端に接続されたコネクタ30とを有する。この内側チューブ体12は、管状体からなり、第1先端チューブ24及び第1基端チューブ28の先端及び基端がそれぞれ開口すると共に、前記第1先端チューブ24の先端が、外側チューブ体14の先端から突出するように配置される。なお、上述したガイドワイヤ20は、例えば、ステントデリバリーシステム10を生体管腔内の病変部に導くために用いられる。
そして、内側チューブ体12は、外側チューブ体14の内部において第1先端チューブ24の基端と第1基端チューブ28の先端とが連結部材26を介して連結される。また、第1基端チューブ28は、その先端から基端まで貫通するルーメン32を有し、該ルーメン32にはコネクタ30を通じて生理食塩水等の液体が注入される。なお、第1先端チューブ24は可撓性が高い樹脂製材料で、第1基端チューブ28は強度の高い金属製材料でそれぞれ構成されていることが好ましい。
第1先端チューブ24には、ステント16の軸方向への移動を規制するステント保持機構(保持機構)34が設けられる。このステント保持機構34は、図3に示されるように、内側チューブ体12の外周面に設けられ、外側チューブ体14の内部にステント16が収納された際に、該ステント16の基端側(矢印A方向)となる位置に設けられるステント係止部36と、該ステント係止部36に対して第1先端チューブ24の先端側(矢印B方向)に設けられ、後述するステント16の縮径部40が係合されるステント係合部38とを備える。
ステント係止部36とステント係合部38は、それぞれ環状に形成され、それぞれ外側チューブ体14側となる半径外方向に突出すると共に、第1先端チューブ24の軸方向(矢印A、B方向)に沿って互いに所定間隔離間して配置される。なお、ステント係合部38の高さは、ステント係止部36の高さに対して低く形成される。
これにより、ステント16は、外側チューブ体14の内部に収納された状態で、その基端がステント係止部36に当接し、且つ、縮径部40が前記ステント係止部36とステント係合部38との間に保持されることによって第2先端チューブ46の先端から外部に露呈することがない位置で保持される。なお、第2先端チューブ46の先端からステント16が放出される際、その基端がステント係止部36に当接することにより、前記ステント16は所定位置に位置決めされた状態で拡張する。
また、途中まで放出されたステント16が外側チューブ体14の内部へと再収納される際、その縮径部40がステント係合部38に当接することにより、前記ステント16は所定位置で位置決めされた状態で保持される。
第1先端チューブ24の先端には、半径外方向に膨出し、外側チューブ体14の先端方向への移動を規制するストッパ部42が形成される。これにより、外側チューブ体14が内側チューブ体12の先端に対して軸方向(矢印B方向)に突出してしまうことが阻止される。
一方、第1先端チューブ24の基端は、該第1先端チューブ24の半径外方向に向かって緩やかに湾曲し、外側チューブ体14のガイドワイヤ導出孔44と連通する。
コネクタ30は、図1、図6~図8に示されるように、円筒状に形成され、内側チューブ体12の第1基端チューブ28と接続されて連通し、図示しない液体注入具(例えば、シリンジ)が接続可能に形成される。
そして、コネクタ30に液体注入具が接続された状態で、第1基端チューブ28のルーメン32を通じて液体の注入がなされ、内側チューブ体12及び外側チューブ体14の先端まで前記液体を流通させることにより、その内部をフラッシュすることができる。
外側チューブ体14は、図1~図4に示されるように、管状体からなり、内部に内側チューブ体12の第1先端チューブ24が配置される第2先端チューブ46と、該第2先端チューブ46の基端側(矢印A方向)に連結され内部に第1基端チューブ28が配置される第2基端チューブ48とを有する。なお、第2先端チューブ46の先端は、生体管腔内の病変部にステント16を留置する際の放出口として機能すると共に、途中まで放出された前記ステント16を回収する際の収納口としても機能する。
また、第2先端チューブ46の基端側には、該第2先端チューブ46の内腔と外部とを連通する開口したガイドワイヤ導出孔44が形成され、内部に設けられた第1先端チューブ24のガイドワイヤルーメン22の開口と連通可能に設けられる。このガイドワイヤ導出孔44を通じて内側チューブ体12のガイドワイヤルーメン22を挿通するガイドワイヤ20を外部に導出させることが可能である。
さらに、第2先端チューブ46の先端部には、その外周面に造影マーカー50が設けられる。この造影マーカー50は、例えば、X線造影性材料から環状に形成される。
また、第2先端チューブ46の内部における内側チューブ体12に設けられたステント保持機構34と連結部材26との間には円筒状の補強用スペーサ(補強用部材)52が設けられる。この補強用スペーサ52は、図1~図5に示されるように、例えば、弾性を有した樹脂製材料、金属製材料、又は、前記樹脂製材料と金属製材料とを混合した混合材からなり、複数の開口を有したメッシュ状に形成される。
そして、補強用スペーサ52は、軸方向(矢印A、B方向)に所定長さを有すると共に該軸方向に沿って略同一直径で形成される。詳細には、補強用スペーサ52は、その軸方向に対して略直交するように交差したメッシュ状(網目状)に形成される(図4参照)。
この補強用スペーサ52の外周径D1は、図5に示されるように、外側チューブ体14における第2先端チューブ46の内周径d1より小さく設定され、該補強用スペーサ52の内周径D2は、内側チューブ体12における第1先端チューブ24の外周径d2より大きく設定される。そのため、補強用スペーサ52は、外側チューブ体14と内側チューブ体12との間に形成された間隙(空間)54において径方向(矢印E方向)に移動自在に設けられる。
また、補強用スペーサ52は、ステント保持機構34のステント係止部36と連結部材26との間を軸方向(矢印A、B方向)に移動自在に設けられる。すなわち、補強用スペーサ52は、外側チューブ体14及び内側チューブ体12に対して固定されることなく、前記外側チューブ体14の内部において軸方向(矢印A、B方向)及び径方向(矢印E方向)に移動可能な状態で設けられている。
換言すれば、補強用スペーサ52は、外側チューブ体14と内側チューブ体12との間に形成された間隙54を埋めるスペーサとして機能する。
ステント16は、図3に示されるように、多数の開口を有したメッシュ状で略円筒形状に形成される。このステント16は、生体管腔内への挿入時には外側チューブ体14の第2先端チューブ46の内部において中心軸方向となる半径内方向に圧縮されて配置され、前記外側チューブ体14の先端から前記生体管腔内の病変部に放出されることにより、半径外方向に拡張して圧縮前の形状へと復元可能な自己拡張型ステントである。ステント16を構成する材料としては、例えば、Ni-Ti合金等の超弾性金属が好適である。
また、ステント16の先端及び基端には、例えば、X線造影性材料から環状に形成された造影マーカー58a、58bが設けられると共に、前記基端には、半径内方向に縮径した縮径部40が形成される。この縮径部40は、内側チューブ体12の外周面に接触することがないように形成される。
操作部18は、図1、図6~図8に示されるように、ハウジング60と、該ハウジング60の内部に収納され外側チューブ体14に接続されるラック部材62と、前記ラック部材62に噛合される第1歯車64を有し該ラック部材62を直線変位させる回転ローラ66とを含む。
ハウジング60は、その中央部が丸みを帯びた形状で形成され、厚さ方向の中央から2分割された第1ハウジング68及び第2ハウジング70から構成される。このハウジング60には、第1及び第2ハウジング68、70の内部において、略中央部に回転ローラ66を収納可能なローラ収納部72を有し、該回転ローラ66の一部が前記ローラ収納部72に形成されたローラ孔74を介して外部に露呈すると共に、前記第1及び第2ハウジング68、70の内壁面に形成された一対の軸受76によって前記回転ローラ66が回転自在に支持される。
また、第2ハウジング70の内部には、ラック部材62が軸方向(矢印A、B方向)に移動可能に収納され保持される第1及び第2収納溝78、80がそれぞれ形成され、前記第1収納溝78が前記第2ハウジング70の基端側(矢印A方向)、前記第2収納溝80が前記第2ハウジング70の先端側(矢印B方向)に設けられる。この第1収納溝78と第2収納溝80との間にはローラ収納部72が配置される。
そして、第1ハウジング68と第2ハウジング70とを組み合わせることにより、第1及び第2収納溝78、80によってラック部材62が先端及び基端側へと直線的に移動可能な状態で保持される。
また、第1収納溝78の基端側(矢印A方向)には、コネクタ30が収納されるコネクタ収納部82が形成され、前記コネクタ30が前記コネクタ収納部82に収納されることによってハウジング60に固定される。これにより、内側チューブ体12を構成する第1基端チューブ28の基端がコネクタ30を介して操作部18に固定される。
なお、コネクタ収納部82は、ハウジング60の基端側(矢印A方向)に開口しており、前記ハウジング60の外部から液体注入具(図示せず)をコネクタ30に対して接続可能に形成される。
一方、ハウジング60の先端には、外側チューブ体14の第2基端チューブ48を摺動可能に保持する先端ノズル84が装着され、該先端ノズル84の内部には、前記第2基端チューブ48が挿通される貫通孔(図示せず)が形成される。
そして、先端ノズル84がハウジング60の先端に装着された状態で、キャップ88を前記ハウジング60の先端に対して螺合することにより、前記先端ノズル84が固定される。すなわち、外側チューブ体14は、その内部に内側チューブ体12が挿通された状態で先端ノズル84を通じてハウジング60内に挿入され、ラック部材62と連結されている。
ラック部材62は、直線状に形成され、且つ、略対称形状に形成された一組の第1及び第2ブロック体90、92からなり、外側チューブ体14における第2基端チューブ48の基端が、前記第1ブロック体90と前記第2ブロック体92との間に挟持されることによって固定される。この場合、内側チューブ体12は、外側チューブ体14の内部を自在に移動することが可能である。
そして、第1及び第2ブロック体90、92からなるラック部材62が、ハウジング60の内部において第1及び第2収納溝78、80に挿入されることによって該ハウジング60の先端及び基端側に向かって直線的に移動可能な状態で保持されることとなる。
また、第1ブロック体90は、ハウジング60の内部において回転ローラ66に臨むように設けられ、該回転ローラ66に臨む側面には軸方向(矢印A、B方向)に沿って凹凸状に形成された複数の歯部94が設けられる。
回転ローラ66は、所定幅を有したホイール状に形成され、中心部に設けられた一対の回転軸96が第1及び第2ハウジング68、70の軸受76にそれぞれ挿入される。また、回転ローラ66の一側面には、回転軸96を中心とした第1歯車64が設けられ、ラック部材62の歯部94に噛合される。そして、回転ローラ66が回転することによってラック部材62が第1及び第2収納溝78、80に沿って直線的に移動することとなる。
また、回転ローラ66の外周部位は、その一部がハウジング60のローラ孔74を介して外部に露呈し、この露呈した部位を介して術者が前記回転ローラ66を回転させる。
そして、上述した操作部18では、例えば、図8に示されるように、術者(図示せず)が回転ローラ66をハウジング60に対して所定方向(図8中、矢印F方向)に回転させることにより、前記ハウジング60の内部においてラック部材62が第1及び第2収納溝78、80に沿ってコネクタ30側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、外側チューブ体14がハウジング60の基端側へと移動(後進)する。これにより、ステント16が、外側チューブ体14の先端から放出される。
一方、ステント16を途中まで放出した後、回転ローラ66を前記とは反対方向(図8中、矢印G方向)に回転させることにより、前記ラック部材62が第1及び第2収納溝78、80に沿ってコネクタ30から離間する方向(矢印B方向)へと移動し、それに伴って、前記外側チューブ体14が内側チューブ体12に対して先端側に移動(前進)してステント16が前記外側チューブ体14の内部に再収納される。
また、操作部18には、図7、図8、図10A及び図10Bに示されるように、回転ローラ66の回転動作を規制することにより、ラック部材62の移動動作を規制可能なロック機構98が設けられる。このロック機構98は、第1ハウジング68の側面に開口した孔部100にスライド変位自在に設けられたスライド部材102と、該スライド部材102に臨むように回転ローラ66の一側面に形成されたピン溝104とからなる。
スライド部材102は、孔部100を介して第1ハウジング68の先端及び基端側(矢印A、B方向)に直線変位自在に保持されている。そして、前記スライド部材102がハウジング60の基端側に位置した状態において、該第1ハウジング68の内部に突出した断面矩形状のピン106が回転ローラ66のピン溝104に挿入されることにより、該回転ローラ66の回転動作が規制される。
なお、ピン溝104は、ピン106の形状に対応して断面矩形状に形成される。そのため、ラック部材62が軸方向に移動することがなく、それに伴って、外側チューブ体14の前進又は後進動作が規制される。
また、スライド部材102をハウジング60の先端側(矢印B方向)に移動させることにより、ピン106がピン溝104から回転ローラ66の半径外方向に離脱し、該ピン106による回転ローラ66の回転規制状態が解除されるため、前記回転ローラ66の回転作用下にラック部材62が軸方向(矢印A、B方向)に移動可能な状態となる。
さらに、操作部18には、回転ローラ66を間欠的に回転動作させるための間欠機構108が設けられている。この間欠機構108は、回転ローラ66において第1歯車64とは反対側の側面に設けられた第2歯車110と、第2ハウジング70に保持され該第2歯車110の歯部に係合されるノッチ部材112とを含む。ノッチ部材112は、例えば、弾性変形可能な薄板状に形成され、第2ハウジング70に保持された部位から第2歯車110の中心に向かって延在し、該第2歯車110の歯部に係合される。
そして、回転ローラ66が回転する際、第2歯車110に係合されたノッチ部材112が弾性変形し、歯部の凹部から隣接する凸部を乗り越え再び凹部へと係合されるため、回転動作を間欠的に行うことができる。さらに、ノッチ部材112と第2歯車110との係合時に発生する音から回転ローラ66の回転動作、回転角度を確認することもできる。
本発明の実施の形態に係るステントデリバリーシステム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、生体管腔内(例えば、血管内)にガイドワイヤ20が挿入され、その先端が前記生体管腔内の病変部に予め留置されている状態とする。
このような準備状態において、図1に示されるステントデリバリーシステム10のフラッシュを行う。
先ず、術者が操作部18の基端に設けられたコネクタ30に対して液体注入具(図示せず)を接続し、前記液体注入具からコネクタ30へと液体を注入する。これにより、液体が第1基端チューブ28のルーメン32を通じて内側チューブ体12の先端側(矢印A方向)へと流通すると共に、前記第1基端チューブ28と第1先端チューブ24との連結部位から外側チューブ体14へと流通する。そして、先端まで到達した液体が内側チューブ体12及び外側チューブ体14の先端から吐出することにより、生体外において前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14の内部のフラッシュが完了する。
次に、図2に示されるように、生体外に露呈しているガイドワイヤ20の基端を、内側チューブ体12の先端からガイドワイヤルーメン22へと挿通させ、前記ガイドワイヤ20に沿って前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14を生体管腔内へと進行させていく。このガイドワイヤ20の基端は、内側チューブ体12の開口及び外側チューブ体14のガイドワイヤ導出孔44を通じて外側チューブ体14の外部へと導出される。
この際、内側チューブ体12及び外側チューブ体14は、図9に示されるように、生体管腔内を進行していくにあたって、曲がりくねった管腔内を通過する際に屈曲することがあるが、該外側チューブ体14の屈曲形状に応じ、その内部に設けられた補強用スペーサ52が外側チューブ体14と内側チューブ体12との間に形成された間隙54において軸方向(矢印A、B方向)及び径方向(図5中、矢印E方向)に移動するのと同時に、屈曲するように断面円弧状に弾性変形する。
詳細には、管腔内の屈曲部位では、外側チューブ体14と内側チューブ体12とがそれぞれ別の変形をすることがあり、その場合に、補強用スペーサ52は、前記外側チューブ体14と前記内側チューブ体12との間に設けられた間隙54において、自在に移動及び弾性変形し、前記外側チューブ体14の内周面を軸方向に沿って略均等となるように保持する。
さらに、管腔内において内側チューブ体12及び外側チューブ体14に対して軸線を中心としたモーメント方向(図5中、矢印H、J方向)に応力が付与された場合でも、補強用スペーサ52は、軸線に対して略直交するように交差したメッシュ状(網目状)に形成されているため、前記モーメント方向(図5中、矢印H、J方向)への応力による外側チューブ体14の変形も抑制される。
換言すれば、補強用スペーサ52を設けることによって外側チューブ体14の曲げ剛性及び捩じり剛性を高めることができる。
そして、外側チューブ体14の先端が病変部に到達したことを造影マーカー50によって確認した後、操作部18のスライド部材102を先端側(矢印B方向)へと移動させ、ピン106を回転ローラ66のピン溝104から離脱させることにより、回転ローラ66の回転規制状態を解除させる。そして、前記回転ローラ66を所定方向(図8、図10A及び図10B中、矢印F方向)へと回転させる。
これにより、第1歯車64の回転に伴ってラック部材62がハウジング60内で基端側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、外側チューブ体14が前記操作部18の基端側へと徐々に移動する。換言すれば、外側チューブ体14が、内側チューブ体12に対して相対的に後進する。
その結果、図11に示されるように、外側チューブ体14内に収容されたステント16が、先端部側から徐々に露出し始めるのと同時に、半径外方向に拡張し始める。そして、ステント16が、外側チューブ体14に対して完全に露出した状態となることにより、円筒状に拡張した状態で病変部に留置される。
最後に、ステントデリバリーシステム10を構成する内側チューブ体12及び外側チューブ体14を基端側(矢印A方向)へと引くことにより、ステント16のみが病変部に留置された状態で生体外へと抜去される。
一方、生体管腔内において途中まで露出した(放出された)ステント16の留置位置等を再調整する場合には、操作部18の回転ローラ66を前記とは反対方向(図8、図10A及び図10B中、矢印G方向)に回転させることにより、ラック部材62がハウジング60内で先端側(矢印A方向)へと移動し、それに伴って、外側チューブ体14が前記内側チューブ体12の先端に向かって徐々に移動する。その結果、露出しているステント16の外周面が外側チューブ体14の先端によって半径内方向に圧縮されながら徐々に覆われていく。
そして、ステント16の縮径部40がステント係合部38に当接することにより、該ステント16が再び半径内方向に圧縮された状態で前記外側チューブ体14内の所定位置に収納されステント保持機構34を介して保持された状態となる。
その後、ステント16が病変部における所望の位置となるように内側チューブ体12及び外側チューブ体14を移動させた後、再び回転ローラ66を所定方向に回転させ前記外側チューブ体14を後進させることによって前記ステント16が再び露出して拡張し所望の位置に留置される。この場合にも、外側チューブ体14は、補強用スペーサ52の移動及び変形によって、その内周面が軸方向に沿って略均等に保持される。
以上のように、本実施の形態では、例えば、弾性を有する樹脂製材料又は金属製材料から形成され、多数の開口を有したメッシュ状の補強用スペーサ52が、外側チューブ体14を構成する第2先端チューブ46と内側チューブ体12を構成する第1先端チューブ24との間の間隙54において、軸方向(矢印A、B方向)及び径方向(矢印E方向)に移動自在に設けられている。
これにより、外側チューブ体14及び内側チューブ体12を生体管腔内へと進行させ、曲がりくねった管腔内で前記外側チューブ体14及び内側チューブ体12が屈曲した場合でも、該外側チューブ体14の屈曲状態に応じて前記補強用スペーサ52が内側チューブ体12との間の間隙54内で軸方向(矢印A、B方向)及び径方向(矢印E方向)に移動するのと同時に、屈曲するように断面円弧状に弾性変形する。
その結果、外側チューブ体14の内周面が、弾性を有した補強用スペーサ52によって好適且つ略均等に保持されることとなり、それに伴って、前記外側チューブ体14が管腔内においてキンクしてしまうことが確実に防止され、該外側チューブ体14及び内側チューブ体12の先端を生体管腔内における病変部へと確実に進行させることができる。
換言すれば、補強用スペーサ52は、その両端部がステント保持機構34及び内側チューブ体12に対して一切固定されておらず、間隙54を埋める目的で移動自在な状態で配置されている。そのため、両端が内管等に固定されたばねを有した従来技術に係るステントデリバリーシステムで懸念されたキンクの発生を確実に回避することが可能となる。
また、補強用スペーサ52が、軸線に対して略直交するように交差したメッシュ状(網目状)に形成されている場合、前記軸線を中心としたモーメント方向(例えば、時計回り、反時計回り)の応力が付与された際に、いずれの前記モーメント方向(図5中、矢印H、J方向)でも捩じり剛性の差が生じることがない。
これに対して、一方向に旋回するように螺旋状に形成されたコイル状のばねを適用した従来技術では、モーメント方向による捩じり剛性に差が生じることとなり、該捩じり剛性の低いモーメント方向に応力が付与された場合に、ばねの変形が大きくなり、それに伴って外管の変形量が大きくなるという問題が生じる。
上記の通り、補強用スペーサ52がメッシュ状に形成されている場合、外側チューブ体14及び補強用スペーサ52に対していずれのモーメント方向に応力が付与された場合でも、前記外側チューブ体14の変形量が好適に抑制され、該外側チューブ体14及び内側チューブ体12を確実且つ円滑に生体管腔内の病変部へと進行させることが可能となる。換言すれば、外側チューブ体14及び補強用スペーサ52に対して付与されるモーメント力の方向性によって捩じり剛性が変化することがなく、時計回り(矢印H方向)、反時計回り(矢印J方向)のいずれの方向に応力が付与された場合でも安定した捩じり剛性が得られる。
さらに、補強用スペーサ52が、弾性を有した樹脂製材料等で形成されている場合、内側チューブ体12及び外側チューブ体14が屈曲する際に同様に弾性変形するため、前記内側チューブ体12及び外側チューブ体14の動きを妨げることがなく好適である。
なお、本発明に係るステントデリバリーシステムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。