株式会社チャイナ・コンシェルジュ
日本・中国間のメール環境に対応できるシステムを。
カレンダーや文書を共有し、社内コラボレーションを円滑に。
中国からのメールが届かない

中国国内でフリーマガジンの発行を手がける同社では、ビジネスを展開する北京、上海、大連、香港に各支社があり、それらを統括する東京本社間とのコミュニケーションはビジネスの生命線である。そのため、中国と日本の両方にメールサーバを設置し、電子メール環境を構築、運用していた。
しかし、日中間の回線事情が悪いことなどもあって、送信したはずのメールが届かなかったり、やっと届いたと思ったら返信されてくるまで一週間もかかってしまうなど、日常的なトラブルに悩まされていたという。
「ひどいときには、元のメールよりも、それに対する返信のほうが先に届いてしまうという、笑い話のようなこともありました。また、中国国内で大きなイベントなどがあると、その期間は日本とのインターネット回線がほとんど使い物にならなくなります」。チャイナ・コンシェルジュの最高技術責任者 (CTO) である草野聖地氏は、当時をそう回想する。
こうした状況をどうすれば改善できるのか。香港にサーバを置くことや、米国のレンタルサーバを利用することなどを検討したが、どれも確実に改善できるという確信が持てなかったという。それに加えて、複数台のレンタルサーバを借りて、複数のドメインを運用することの煩雑さも課題となっていたことから、サーバの運用も任せることのできる Google Apps を検討し、その結果、導入することになった。
果たして Google Apps を使ってみると、各拠点からのアクセスが格段に改善されることが分かった。あれほど苦労したことが嘘のように、メールの送受信もまったく問題なく安定して利用できるようになったのである。
最大の懸案事項を解決したことに加え、Google Apps の採用を後押ししたのは、マルチリンガル対応と、Google カレンダーの存在だったという。
チャイナ・コンシェルジュでは、社内の公用語は日本語であり、日系企業とやり取りすることが多い営業スタッフのほとんどが日本語を話せるのだという。しかし、全社導入ということで、日本語が話せないスタッフでも利用できるように、日本語以外の言語、特に中国語への対応が不可欠だった。Google Appsでは、メニュー表示用の言語として、中国語の「簡体」 (Simplified) と「繁体」 (Traditional) がサポートされており、中国のスタッフも、日本のスタッフも同じように利用することができた。
Google カレンダーも、マルチリンガル対応のスケジューラということが同社にとって大きな意味を持っていた。チャイナ・コンシェルジュでは、日本と中国の支店を結んでオンラインでミーティングを行うことが多く、そのたびに日本と中国の双方でスケジュール調整をする必要がある。以前は、そのスケジュール管理に、日本語と中国語をサポートしている数少ない選択肢の中から選ばざるをえなかったグループウェアを利用していたが、その機能に満足していなかったのだという。しかし、Gmail の導入とともに Google Apps の一機能である Google カレンダーを利用できることとなり、今まで利用していたそのグループウェアの利用をやめた。今では、全社員のスケジュール管理やミーティングの調整を Google カレンダーで行っている。
現地で付き合いのある方から『お互い大変ですね』と言われたのですが、こちらは Google Apps にしたので、まったく影響がありませんでしたよと言って、ちょっと優越感に浸ってしまいました (草野 聖地氏)
ウイルスメール対策から解放
「旧来のメールサーバからは、まったく問題なくスムーズに Google Apps へ移行できました。使い始めたのは 10 月 1 日からで、中国では国慶節という祝日に当たり、この日から 1 週間が連休となります。そのため、メールの送受信の少ない連休中に準備を行い、ユーザの利用開始は、10 月 9 日からとしました」 (草野氏)。
移行に際しては、これまで利用していたアドレス帳の情報を各自で Gmail にインポートしただけで、メールそのものは、あえて Gmail に移すことはしなかったという。
「ウイルスがすごいんですよ、中国は」とその理由を草野氏は説明する。中国では全般的に IT リテラシがそれほど高くなく、そうした人たちとメールをやり取りする機会が頻繁にあるため、コンピュータウイルスが送られてきてしまうことも少なくないのだという。これまでに受け取ったメールには、そうして送られてきたウイルスがたくさん残っている可能性がある。
Google Apps にしてからは、Gmail のウイルス対策、迷惑メールのフィルタリング機能に大いに助けられているという。「どうしても過去のメールを Gmail に移したいという一部のユーザーには、手動で Gmail のアカウントに転送させるようにしました。そうすることで、Gmail の機能で自動的にウイルスチェックされますので」 (草野氏)。
「日本と中国の祝日や休日を簡単に共有できるのが便利ですね。日本人スタッフにあまり馴染みのない中国の祝日などが一目瞭然なので。それから、他のスタッフのスケジュールを共有して、確認できる点も気に入ってます。ミーティングの日程を決める場合も、参加者全員のカレンダーを表示させれば、どこが空いているかを簡単にチェックできます。また予定内容を他人に公開するように設定しておけば、その内容を見て『これは動かせそうだな』と判断することもできます。以前使っていたグループウェアよりも使いやすいですね」 (草野氏)。
使い込んでいるからこそ、ちょっとした機能も見落とさない。「タイムゾーンを変更すると、それに従ってスケジュールが現地時間に自動調整される機能も重宝しています。たとえ日中間で1時間しか時差がなくても、案外、間違いやすいものなので」 (草野氏)。
導入後に使ってみて「意外に使えることが分かった」(草野氏)と指摘するのが、Google ドキュメント。中国のスタッフと 1 つの文書を共有して予算案などを作成しているという。「オンラインで共有した文書を見ながら予算のシミュレーションを行います。これぐらい売れるだろうから単価をここまで上げましょう、とやると、相手から『いやいや無理です』と修正されたり。日本と中国の距離を感じません。徐々にこうしたやり方が社内に浸透していくでしょうね」 (草野氏)。
期待以上のコストメリット
Google Apps の導入効果について草野氏は「Gmail では、レンタルサーバのコストを削減できたことに加え、サーバーをメンテナンスする手間もかからなくなったので、それだけでも十分に元が取れています」と語る。「その上に、Google カレンダーでスケジュール管理ができるようになったため、今まで使っていたグループウェアから Google Apps に完全に置き換えることができました。そのコストメリットは大きいですね。従来のグループウェアで使っていた稟議システムがあるのですが、削減できたコストを使って新規に開発することにしました。それによって来年以降はさらに大きくコスト削減できると考えています」 (草野氏)。
「先日も中国で大きなイベントがあり、現地で付き合いのある方から『お互い大変ですね』と言われたのですが、いえ、こちらは Google Apps にしたので、まったく影響がありませんでしたよと言って、ちょっと優越感に浸ってしまいました」。最後にそういって草野氏はいたずらっぽく笑ってみせた。